ゾウに対する「倫理的な配慮」には、一つだけの考え方があるわけではありません。
あるサンクチュアリは、「これまで労働や観光に使われてきたゾウを、人間による有害な利用からどう守るか」という問いから出発します。
別の保全施設は、「研究、繁殖、群れの再形成、そして可能な場合には再野生化を通じて、ゾウという種をどう存続させるか」を中心に据えています。
Manifa Elephant Campは、もう一つの問いから始めます。
ゾウ、象使い、地域社会、森が、これからもともによく生きていくためには何が必要なのか。
私たちは、受け継がれてきた慣習をすべて、そのまま保存しようとしているのではありません。一方で、人とゾウの関係がなくなるほど倫理的になるとも考えていません。
Manifaが目指すのは、ゾウの福祉を改善しながら、長期的なケアを可能にしてきた象使いの知識、地域の生計、そして森林景観をともに未来へつなぐことです。
以下の表は、ラオスのゾウ観光と保全に見られる三つの大きな方向性を比較したものです。個々の施設の優劣や福祉水準を判定するものではなく、それぞれが旅行者に向けて強調している中心的な考え方を整理しています。
| ルアンパバーンの非騎乗型サンクチュアリ | サイニャブリーの保全・再野生化センター | Manifa Elephant Camp:ラオスに息づく、人とゾウの共生文化 | |
|---|---|---|---|
| 出発点となる問い | ゾウを人間による有害な利用からどう守るか | ゾウの個体群をどう保全し、一部のゾウを野生生活に戻すか | ゾウ、象使い、地域社会、森が、どうすればともによく生き続けられるか |
| 中心的な倫理 | 救済、非騎乗、自然な行動、人道的な扱い | 研究、獣医療、繁殖、群れの再形成、生息地保全、再野生化 | よりよい関係、生涯を通した福祉、生きた知識、共有される景観 |
| 主なケアの対象 | 救済された個々のゾウ | 絶滅危惧種としてのゾウとその個体群 | ゾウと、その生活を支える人、知識、地域、森の関係全体 |
| ゾウの捉え方 | 過去の搾取から回復し、第二の人生を与えられる存在 | 健康、繁殖、社会行動を科学的に管理する必要がある希少動物 | 固有の履歴、習慣、好み、性格、人との関係をもつ個別的な存在 |
| 象使いの役割 | ゾウの日常的な福祉を支える飼育者 | 専門的な保全計画に参加する熟練スタッフ | 長期的なケアの担い手であり、ゾウとともに知識をつくる存在。その生計や家族も倫理的な配慮の対象となる |
| 伝統知の位置づけ | 人道的なケアを支える文化的な絆 | 獣医学や保全科学と組み合わせて利用される地域知 | 特定のゾウ、人、森との関係のなかで形成され、現在も変化し続ける実践知 |
| 森の意味 | ゾウの運動、採食、回復のための自然環境 | ゾウの保全と再導入のための生息地 | ゾウの福祉、象使いの実践、村の暮らし、生態系のケアを結びつける共有された生活景観 |
| 旅行者の役割 | 非騎乗体験を通して倫理的な接し方を学ぶ参加者 | 専門的な保全活動を支援する参加者 | ラオスで続いてきた人とゾウの関係世界に迎えられるゲスト |
| 理想とする未来 | 人間による有害な利用を減らした、安全で尊厳ある生活 | より自律的なゾウの群れ、保護された生息地、可能な場合の再野生化 | ゾウの福祉、象使いの知識、地域の生計、森がともに再生される持続可能な未来 |
ゾウ観光の倫理は、「許される活動」と「禁止される活動」の一覧として説明されることがあります。こうしたルールは明らかな危険を見つけるうえで役立ちますが、それだけで一頭のゾウの生活全体を評価することはできません。
ゾウの福祉は、日々の運動量、自然採食の機会、食事、体格、休息、ほかのゾウとの関係、森や水へのアクセス、獣医療、管理方法、そしてそのゾウを継続的に世話する人々の知識によって左右されます。
そのためManifaでは、「乗る・乗らない」という一つの活動だけで福祉を判断しません。一日の暮らし、季節による変化、そして一生を通して、そのゾウがどのように生活しているかを考えます。
Manifaでは、象使いを、外部の専門家によって置き換えられる単なる労働者とは考えていません。
象使いは、特定のゾウを毎日見守るなかで、その動き、気分、食欲、体調、習慣、恐怖、ほかのゾウとの関係について知識を蓄積しています。
もちろん、これは伝統的な慣習がすべて正しいという意味ではありません。ゾウの福祉に役立たなくなった知識や方法は、見直されなければなりません。獣医学、動物福祉研究、そして地域で培われた経験には、それぞれ重要な役割があります。
Manifaが重視するのは、象使いに対して一方的に改善を要求するのではなく、象使いとともに改善していくことです。
象使いの知識、労働環境、家族の生計、そして次の世代へ技術を伝える可能性も、ゾウの倫理を考えるうえで切り離すことはできません。
森は、旅行写真のための美しい背景ではありません。
ゾウに食物、日陰、水、移動空間、運動、さまざまな感覚刺激を与えます。同時に、象使いがゾウを観察し、実践的な知識を育て、人とゾウの関係を築いてきた場所でもあります。
したがって、ゾウを守ることは、健康的な運動、採食、長期的なケアを可能にする森林景観へのアクセスを守ることでもあります。
私たちは、このアプローチを次のように表現しています。
ラオスに息づく、人とゾウの共生文化
生きた関係と共有される景観を通じた保全
「生きた文化」とは、理想化された過去を再現したり、伝統を変化しないものとして展示したりすることではありません。
ラオスの人とゾウの関係は、森、労働、交通、観光、村の生活の変化に応じて、常に形を変えてきました。
未来へ継承すべきなのは、過去のすべての活動ではありません。特定のゾウを理解し、責任をもってケアし、安全に協働し、森へのアクセスを維持し、福祉上の新しい課題に応じながら実践知を伝える能力です。
伝統は、変わることができてこそ、生きた伝統であり続けます。
Manifaでは、ゾウと象使いについて学ぶための、計画され、管理された体験を提供しています。
プログラムによって、森を一緒に歩くこと、自然採食の観察、餌の準備、給餌、水浴び、希望者向けの慎重に管理された裸乗りなどが含まれる場合があります。
任意の活動への参加を強制することはありません。すべての活動は、個々のゾウの健康状態、年齢、性格、その日の様子に加え、地形、気温、実施時間、休息の必要性に応じて調整されなければなりません。
完全な非接触型、または観察だけのサンクチュアリ体験を希望する方にとって、Manifaは期待に合わないかもしれません。
一方で、ラオスで人とゾウがどのように生きてきたのかを学び、ゾウの福祉、象使いの知識、地域の生計、森の保全を一体として支えたい方に、Manifaは明確な選択肢を提供します。
Manifaへの訪問は、次の取り組みを支えます。
皆さまがManifaを訪れるのは、ラオスの人々からゾウを「救い出す」ためではありません。
ゾウに責任あるケアを提供してきた人々、知識、暮らし、景観を支えるためです。
人とゾウの接触を制限することを倫理の中心に置くアプローチがあります。ゾウの自律性を高め、可能な場合には野生へ戻すことを目指す保全活動もあります。
Manifaは第三の道を選びます。
歴史的に形成されてきた人とゾウの関係を消滅させることではなく、その関係をよりよいものへ変えていくことです。
倫理は、距離を取ることだけではない。
保全とは、生きた関係を未来へつなぐこと。
ルアンパバーンの森のなかで、ゾウと象使い、そして両者が形づくってきた生きた景観に出会ってください。
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論文「ゾウ中心主義の形成 ― ラオスの象観光と保全における倫理的再編成」
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